ベーシックインカム㊵_ベーシックインカムレポート2021<ロング版>より一部抜粋 5.技術的な話_2021/10/23

ベーシックインカムレポート2021<ロング版>

2021/5/3/Mon

2021/5/4/Tue

2021/5/5/Wed

 

 

<ミドル版>から加筆した部分を青字にしました。

それと表を複数追加しました。

このブログを読んでくれた方がいてとてもうれしかったです。

この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

今後もこのブログでの考察は続きます。

 

2021/5/9Sun

5-1、5-2-7について一部加筆しました。赤い字にしてあります。

 

※特に5技術的な話、どうやるか、に力を入れているので、忙しい方はここだけでも覗いてみていただけたらと思う。

 

2021/10/23/Sat

2021年5月にアップした

ベーシックインカムレポート2021<ロング版>より

5.技術的な話、どうやるか

の部分だけを抜粋してお届けします。

実際には、マネー量とインフレの考察が主体となっており、ベーシックインカムをどうやるかについては触れられていないのでご注意下さい。

とくに

5-4貨幣の真実の話

の中で、表を使って説明する部分は、私の完全オリジナルで、他に同様の指摘をしている人はいないと思うので是非着目していただきたいと思います。

 

ブログは久しぶりの更新となりました。

いつも応援ありがとうございます。

冬になるので、お体お気をつけ下さい。

 

 

 

5技術的な話、どうやるか

 

5-1新しい政府通貨発行で

5-1-1私は新しい政府通貨発行がよいと思っている。

日銀の国債直接引き受けは日銀法で禁止されていることから(財政法第5条)、国債発行(MMT)で通貨供給を続け、国債保有者からいざ「返せ」と言われたときに手詰まりになるリスクがあるからだ(ちなみに、実はMMTを地でやっていたのがアベノミクスだ。日銀が大量に市中の国債を買い取った。一応は、直接引受けではなく、間接的な売りオペ買いオペの一環ということなのだろうが、禁じ手に近いグレーだろう。意図してか意図せずか日本は実験台になり、MMTに実践的証拠を提供したとも言える。MMTを実践しても特に問題が起こらないことの証拠を)。

しかし、たとえ新しい政府通貨発行であってもマネー供給が生産能力を超えてインフレが激しくなったらそれ以上の発行はできない。

また、現在日本では政府通貨発行は認められていない(おそらく流通している紙幣、貨幣のような少量の、維持のための発行は認められている)。1844年の江戸時代の歳入は貨幣改鋳益(=通貨発行)33.3%、年貢(=徴税)25.1%、御用金・上納手伝(=徴税)27.4%・・・)というものだったが、これを国債発行に変えてしまったという経緯がある。このあたりの改革は必要になってくるだろう(ちなみに、明治10年西南戦争では戦費調達のために、政府自身がマネー発行した(現在で言う、政府と日銀を一体とする「統合政府論」の仕組みだった)。これが悪性インフレを引き起こし、その沈静化のために明治15年に日銀を設立した。これにより安易なマネー発行に歯止めをし、税収ではなく、安易なマネー発行で歳出をまかなう仕組みを排除した。しかし、時は流れて2013年、日銀は異次元緩和政策という実質財政ファイナンスを開始。必要ならいくらでもマネー発行できるのだから、財政破綻のリスクはなくなった。これにより財政再建の重要性は忘れさられた。今は軍事費調達ではないが、社会保障費やコロナ対策費調達のために、昔のあやまちと同じことをしている。しかしこれが悪性インフレという同じ結末を迎えるかどうかはわからない。私はそうはならないと信じたい)(1930年代前半に高橋是清大蔵大臣は、昭和恐慌から脱出するため積極財政を行う。この際は、国債を日銀に直接引受けさせた(これも統合政府論の仕組み)。しかし景気回復するとインフレを懸念し財政規律を再び強めた)

  

5-2現在はインフレか

それでは、打ち出の小槌とも言える、新しい政府通貨発行を制限する原因となるものはインフレだけであるが、現在はどうだろうか。

私の生活実感としては、現在は少しずつインフレなのではないかと思っている。食べ物の内容量が同じ値段で少なくなったり、日用品がここ数年少しずつ値上がりしているような気がする。

5-2-1参考例

ちなみに参考までに1995年に100円だった缶ジュースが年2%のインフレだとどうなっていくのか書いてみる。

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1995年に3000万円だった家はどうだろう。

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5-2-2フィッシャーの交換方程式で考える、マネー供給量とインフレ

古典的な貨幣数量説(フィッシャーの交換方程式)というものがある。

MV=PT 

M:貨幣量

V:貨幣の取引流通速度

P:物価

T:1期間における財・サービスの取引量

 

例えば、VとTが一定のままで、貨幣量を100倍にしたら・・・

100M × 1V = 100P × 1T

となり、物価が100倍になるということ。貨幣量について考えるときに参考になる式だ。

 

5-2-3上記を、バケツに水をそそぐイメージで考える

バケツに水をそそぐイメージ、をもとに考えてみる。

水:貨幣量(M)

水位:物価(P)

バケツの穴から漏れ出す分:人々が貯蓄に回す分(V)

バケツの大きさ:生産能力=供給能力=幸福度=GDP(T)

日本というバケツに、水というお金を注ぐ。

水位という価格水準が上がる。

 →インフレになる

 

5-2-4もう一度フィッシャーの交換方程式に戻る

MV=PT

これを変形すると

P=MV

    T

マネーMを増やしてやっても、生産力Tが増えなければ、インフレになる

 

「お金があればもっといろいろできるのに。もっと世の中上手くいくのに(Tが増えるのに)」(=M増やすべき)  今これ

Or

「お金はあるけど供給能力が追いつかない(Tは増えない)」

(=M増やさないべき)

 

この式を別の形に変形してみる

T=MV

    P

T(幸福度)を増やすには、Mを増やしてPをなるべく変えないこと。

 

 

5-2-5NetyaNewさんの国家予算案をもとに考える

 

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上の図の青色の部分だけに着目してもらいたい。

NetyaNewさんの国家予算案728兆円を見たときに、これは大きすぎると普通は思うかもしれない。しかし、私はなぜか希望を感じた。そして、本来順調に成長していたら日本はこうなっていたのではないかと思った。これぐらいの規模があったら、たぶんみんな幸せに暮らせていただろうし、様々な問題が克服されていただろう。本来このぐらいであるべきだったのだ。

もちろんこれは供給が追い付く前提の話ではあるが、供給が全く追い付かなければ、大型予算を消化することで(財源は税収ではなく、国債発行か新しい政府通貨発行とした場合)、マネー供給だけがたくさん増えて、その分が単純にインフレになるだけである。商品サービスの量は変わらず、価格だけが何倍かに増えるだけなので、人々の幸福度は変わらない。

ちなみにベーシックインカムを抜いた予算で考えると合計で260兆円である。

1995年の日本の歳出は76兆円である。この3.42倍が260兆円である。

韓国は1995年と2019年の歳出を比較したとき7倍に伸ばしている。

実際の日本の2019年歳出は101兆円で、わずか1.32倍しか伸びていない。

この差が経済成長の差に如実に表れている(韓国のGDPは1995年0.566兆ドルから2019年1.646兆ドルとほぼ3倍に。日本のGDPは1995年5.449兆ドルから2019年5.079兆ドルに下がった)。

そう考えるとあながちこの予算案は大きすぎる金額とは言えず、実際にこのぐらいに増えていてしかるべきものだったのだと思う。それができなかったから日本は凋落しつつあるのだ。

このような世界であったなら、需要に応えるために、たくさん供給しなければならず、現在ニートや引きこもりの人も強制的に動員され普通に働いていただろう。昔の普通が今はとても難しいのだ。

また、たくさん供給しなければならないので、仕事も簡単さが求められる。仕事の平準化、誰でもできるマニュアルが大事になるだろう。個人情報保護やコンプライアンスなど仕事を複雑怪奇にしていくことは、T(生産性)を下げる圧力に他ならず、国富を損なう、幸福度が下がる。バカなことばかり時間をかけてやっている世の中の現状をよくよく省みてもらいたい。コンプライアンスがどうでもよいと言っているわけではなく、コスパが悪すぎることばかりやるな、本業をおろそかにするなと言いたいのである。

 

5-2-6個人個人ができること

上の考察から、インフレをおそれずマネーを増やすには、供給量を増やすことが大事だということがわかってもらえたかと思う。

私は依頼心ばかり強い人間で困るが、自分への戒めもこめて、政府にばかり頼るのではなく、個人個人ができることも考えたい。

5-2-6-1それは一人一人が生産性を上げることである。そして自分の役割を誰にでもできるようにすることだ。マネーを増やしても供給が追い付かなければインフレになるだけだ。マネーを増やして、供給も増やして、人々の幸福度を上げていくために生産性を上げることが大事。また、マネーはあくまで分配のツールでしかなく、本当に大事なのは商品サービスだ。お金が人々を幸せにするのではない。

これは賃労働をしている人だけに限らない。日常を日々少しだけ上向くように、あるいは現状維持できるように、あるいは減少を少しずつにできるようにする。

もちろん頑張りすぎてイライラすることはないし、笑いながら過ごせる範囲でよいし、できないとき、できない時期もあるのでナーバスになる必要はない。また、人間なかなか変われないのも真実だ。

5-2-6-2我々は知恵を磨くしかない。よく言われるように日本は資源も何もない国で、知恵を磨くしかない。近年はあった資金も技術もなくなりつつある。昔も今も日本人は知恵を磨くしかないのだ。

5-2-6-3我々はいつまでも失敗を引きずり、委縮していてはいけない。日本人は真面目だからか、他の国民よりもこういう傾向があると思う。国民気質なのだろうか。だからいつまでたっても、民間の借入残高も戻らないのだ。私自身にも声を大にして言いたいところだ。

 

5-2-7実際にインフレになるか計算してみよう

P=MV

    T

M:マネーサプライ1,283兆円

T:GDP560兆円

V:一定

とすると、

Pは2.29となる。これを物価の基準値とする。

 

今1億2000万人にベーシックインカムを月10万円給付する。

年間144兆円となる。

1,283兆円+144兆円=1,427兆円

このときPは2.54となる。これは11%のインフレが起こったことになる。

しかし、実際には貯蓄に7割回って(コロナ禍の10蔓延の定額給付金はその7割が貯蓄に回ったというデータがある)、実際に市場に流通する分には3割だけだったとする。144兆円×0.3=43兆円

また、需要が増加することに対して、供給が追いつき、GDPも増えるとする。10の需要増に対して、2割は供給が対応できるとする(ちなみに後述の考察から日本では、マネー増加の67%がGDP増加につながるのでこの数値を適用するのもよいかもしれない)

43兆円×0.2=8兆円

1,283兆円+43兆円 ÷ 560兆円+8兆円 =2.33

このときPは2.33となる。これは2%のインフレが起こったことになる。

 

このように、単純に水を増やしてやった分がインフレにそのまま回るわけではなく、実際には穴から零れ落ちていく水もあり、またバケツの大きさも大きくなる。そのため、思ったよりは水位は上がらない(思ったよりはインフレにならない)。

 

今別にわざとインフレ2%にしたくて、計算していったのではなく、たまたまこのぐらいかなと直感でやっていったところ2%になって驚いた。

しかし、れいわ新選組参議院・調査情報担当室に委託して、マクロ経済モデルを活用したシミュレーションでも、2%にならないとのことだったし(れいわ新選組ユーチューブ動画「みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか?」)、

小野盛司氏のNEES日本経済モデルを活用した、毎月10万円給付のシミュレーションでも年平均1%程度のインフレとのことだったので、

お二方のシミュレーションがどのような計算式かはわからないが、私の今回の計算もあながち間違いではないといったところではないか。

 

5-2-8インフレのメカニズム

ディマンド・プル・インフレ(需要増加によるインフレ)

コスト・プッシュ・インフレ(コスト増加によるインフレ)

という2種類のインフレがある(さらに付け加えるとすれば、次元の異なるものとして、ハイパーインフレ(通貨の信用が低下することによる悪性インフレ)が挙げられるだろう。これは需要供給で決まる通常のものとは一線を画す、非常時のものだ)(金納雅彦さんはツイッターやブログの中で第一次世界大戦後のドイツ(賠償金を払うため)でのハイパーインフレについて、最初の1年でマネー量を17倍にし、それによる経済混乱を緩和するために、マネーを発行し続け、最終的には43億倍になったと言っている)(ちなみに日本のマネーサプライ1283兆円×17倍=2京1811兆円)。

 

おそらく以下のようなメカニズムだろう。

マネーを増やす

すると需要が増える

★すると価格が上がる

すると仕入れコストも上がるし、生活費が上がることから人件費も上げざるをえず、赤字にはできないので、採算をとるためにさらに商品の価格が上がる

するとさらにコストがあがる(→★repeat。インフレのスパイラル)

 

これと別に加わる動きとして、

需要が増えた分、供給を増やす動きが出るので、

タイムラグはあるが、

供給が増えて、需要と供給での関係では、価格は下がって再び最初の価格に戻る。

しかし、コストで増えて価格が増えた分は、なかなか戻らないので、結局は、供給が追い付いたとしても、少しのインフレ傾向はまぬがれないだろう(=物価の下方硬直性)。

このように物価をずっと一定にとめおくことは事実上不可能と思われる。

 

というわけで、現在はゆるやかなインフレではあるが、これが即供給能力が追い付かないという結論にはつながらないだろう。しかし、仮に供給能力が追い付かないからだと考えてみて考察をこのまま進めてみたい。

 

 

 5-3みんなが幸せになれる生産能力はまだまだ獲得できていない(=供給能力が追い付かない)のはなぜか。

 

5-3-1国が貧乏になったから

1985年のプラザ合意で大きく円高にさせられた。労働力の安い国が世界の工場になるのは当然のことで、このとき日本は世界の工場の地位を明け渡したのだ(製造業の断念)。

本来は円高による内需主導の産業構造に転換するべきだった。

あるいはシリコンバレーのように付加価値の高い新しい産業を興すべきだった。

しかし、実際には終わりなきコストカット、円高になった分をただ働きで取り返すという無茶な離れ技に打って出た。それで実際に引き続き輸出で戦えるほどの水準まで生産コストを下げたのだから、大したものだし、ものすごい努力だっただろう。

勝てないはずの無茶な戦略でありながら、世界一勤勉と言われる一兵隊たちの努力で勝ちをもぎとったのだ。

しかし、それはものすごい無理をしいる戦いだっただけに、国民は疲弊し、国の形は歪んだ。結果「今だけ、金だけ、自分だけ」という風潮が蔓延し、日本の良さも喪失の危機に瀕している。国家100年の計も、良識も、叡智もくそくらえだ。

この状況を改善するには、ただ働き・サービスをやめ、それでも食べていけるように産業構造を少しずつ見直すことだろう。

今や新興勢力に次々抜かれている日本にそれができる底力がまだ残っているはわからないが、これは古今東西万国共通の悩みだ。かつて学年でトップクラスの成績を誇っていたが、伸びしろのある人たちが後から追い上げてきて抜かれるというのはよくある話だ。エジプト、インド、ギリシャもローマもポルトガルも、スペイン、イギリス、中国もかつて一世を風靡した国は例外なく同じ道をたどっている。アメリカだけはまだなんとか1位を死守しているが、シリコンバレーGAFAなど付加価値の高い新しい産業を興すことに成功したからだろう。それでも今後長い目でみれば中国、インドに抜かれるだろう。

 

5-3-2富の偏在

充分な商品サービスがあるのに、みんなが幸せになれないということは、富の偏在が起こっているということ。

5-3-2-1

対策1富裕層増税

累進課税を以前の水準に戻す。これは富裕層の方に理解を得るというよりも、半ば義務的な話であり、必要悪だと思って受け入れてもらうほかない。そうしないと共同体としての秩序が保てず、結局最後は富裕層の人まで含めて全員が不幸になる。

5-3-2-2

対策2内部留保に課税

企業は過去最高の利益を稼いでも、先行きをおそれて投資に回せないし、非正規雇用を正規にしようと思う思いやりを持つ余裕がない。しかし、内部留保あるいは、税引前利益に高い課税をしたらどうか。税金に払うぐらいなら投資するかとか、利益分配だと言って、従業員の待遇改善を図るインセンティブになるかもしれない。

5-3-2-3

ここで得た税収を、BIやその他の再分配に回す。

すると

未婚

非正規

ニート

引きこもり

などの解決につながるのではないだろうか。

 

5-3-3常に商品改定

競争原理が強すぎて、我々は常に新しい商品を生み出している。いつまでたっても同じものをローコストで製造できるようにならない。仮に昔の車をそのまま作り続けていたとしたら、今頃一台20万円とかで買えていないだろうか。

あまり頻繁な改定というものは、生産性を大いに低める要因だと思う。

5-3-3-1対策

BIなどで社会の競争原理を少しゆるめてやったらどうだろう。

5-3-3-2実際のところ

私は近年ずっとこのように思ってきたのだが、実際には均衡点というものは常に動いていくものかもしれない。コロナ禍でもやっと新しい生活様式や社会的に感染を抑えることになれてきたと思ったら、変異株が出てきてせっかく掴んだ均衡点がずれて、また模索のし直しとなった。

卑近な例では、私自身も年齢とともに落ちていく体力との折り合いをつける生活習慣をやっと掴んだと思ったら、さらなる老化でその均衡点がまたずれて、それでは用が足らなくなり、また模索のし直しとなり閉口している。

つまり経済もそうだが、均衡点が常にずれていくことにより、模索のし直しがずっと続くため、いつまでも楽になれないのかも知れない。

 

以上で、現在のゆるやかなインフレが、仮に供給能力が追い付かないからだとした場合の考察を完了する。

 

 

 

5-4貨幣の真実の話

これは大西つねきさんのオハコの話であるが、そこから学ばせてもらい、自分なりに考えてみた。

思い返せば、貨幣についての考察は古今東西様々になされて、いつまでも終わることのないものだ。ケインズ貨幣論を記し好評を得たし、同時期にシュンペーター貨幣論を記すもケインズ貨幣論があまりに好評であったことから発表をやめたこともある。またシュンペーターが10人の偉大な経済学者について書いた本で、フィッシャーも登場するようだが、彼もまた貨幣論の権威である。

現代の貨幣は金本位制度(お金とゴールドの交換が担保されていること)ではなく、管理通貨制度(各国がインフレにならないように管理しましょうということ)なので、お金の裏付けというものは特にないが、強いて言えば、

・みんながそれをお金と認めていること

・過度なインフレにならないこと

の2点だけだ。

考察に戻ろう。貨幣は誰が発行しているかと言うと、意外にも一民間銀行が信用創造で発行しているのだ。世の中にあるお金は全てもとをたどると、誰かの借金に行きつくのだ。

ということは、借金を返すと世の中のお金は減るのだ。全員が全ての借金を返すと世の中からお金が消えてしまうのだ。

なんとも変な感じがするが事実である。しかし、生活実感からはかけ離れている事実なので、これを知っている人は少ない。

 

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だから経済成長をしたかったら、マネー発行も増やしてやらないといけないのだ。

ところがである。日本はバブル景気がはじけてから借金が不良債権化して、銀行は貸し渋り貸しはがし、企業サイドも10年、20年、30年と続く長引く不況で先行きが見通せず、設備投資等する気になれず借入を控え、民間の企業の借金は500兆円から400兆円まで逆に下がってしまった。

これを補完してなおかつ+αで借金(マネー発行)を増やしてやらなければならない。

なぜならマネー(水)が減ると、理論上はデフレ(水位低下)が起こる。また、GDP減少(容器の縮小)も起こる。

しかし理論上は起こるはずのデフレも物価の下方硬直性で、実際には下がりにくい(水位低下が起こらない)。

また、一番大事なのは技術進歩は止まらず、生産性向上は進む(つまり容器は小さくなるどころか、少しずつ大きくなっていく一方で、これも止められない)。

つまり、マネーは減るが、デフレもGDP減少も起こらないという無理な状態が出現し、経済社会がいびつに緊張している(水は減るが、水位低下も容器縮小も起こらないという、物理的に無理な状態、緊張が起こる)。

その緊張状態を緩和するには、水をどこかから引っ張ってくるしかないのだ。

そしてそれが出来るのは最後の借り手たる政府だけだ。

というわけで、国の借金は民間の減少を補いつつ、なおかつ技術進歩による生産性向上に歩調を合わせるために膨張し、先進国の中で随一の借金大国への道を歩み始めたのだ。

この話は半ば私の創作であるが、

・貨幣の真実(マネー供給量=民間(個人+企業)借入残高+国の借入残高)と

バブル崩壊後の民間借入残高の低下と

・それに歩を合わす形で、国の借入残高が膨張したこと

を総合的に考えて、

話の筋道がつく形に組み立てたものである。

実際に当時どのような議論がなされ国の借金を増やしていったかはわからないが。

この話があながち嘘じゃないということは次の表を検証してもらうとわかる。

 

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この表を見てわかることは、

・マネーを増加させた国のGDPは増加する

・おおむねマネー増加率の半分の増加率をGDPは示す(薄オレンジ部分の太字の数字)

・日本のGDP成長率は低いが、これはマネーの増加率が低いからだ

・その中でも政府マネーの増加率は他国と比べてそこまで悪くないが、民間マネーの増加率が圧倒的に低い

・日本の消費者物価指数の増加率1.17(緑色の部分の一番右側)は驚異的な数値だが、日銀の物価コントロールが非常に秀逸だったとほめることもできるが、別の側面から見ると、マネーを増やして、経済を成長させていく過程には必ず、タイムラグと物価の下方硬直性があるので、少しばかりのインフレ傾向は排除できないのだが、それがないというのは「どこか調子悪いのか?」という日本の不調さを如実に物語っているとも言える

ということだ。

 

そして導き出せる結論は、

バブル崩壊後、失敗をおそれ、委縮しがちな国民気質からか、民間部門が委縮し、国の成長率は下がった

・政府の借金は確かに伸びているが、他国に比べて大きく伸びているわけではない。これがなぜ目立ち、なぜたたかれているかと言うと、GDPが他国に比べて伸びないので、GDPとの比率で極端に大きくなってしまったからだ(先進国随一であって、世界一ではない)

・仮に民間マネーが他国並みに増加していたら、きっとGDPは押し上げられ、国債残高はGDPとの比較で騒がれる水準にはなっていなかっただろう(計算しようと思えば上の表からすぐにできるが、ここでは割愛させていただく)

GDPを増加させたかったら、マネーを増加させることだ。マネー増加率のおよそ0.5倍のGDP増加率が期待できる(とくに先進国ほどこの倍数は高くなるかと推察される)(仕組みとしてはこうだ。抑えられている供給力が解き放たれ、供給サイド(就労側)も喜ぶし、商品サービスの提供を受けられる需要サイド(顧客側)も喜ぶ、というwin-win


 

5-5適正マネー量を規定するもの

適正マネー量をはじき出すものは、技術力。生産力である。以下が優先して考えられるべき上位概念と下位概念の順番である。

・技術力、生産力(技術水準+生産性)

・これに人口の増減を加味する(人口が減ってマネーが減るのは自明だが、技術力、生産力がこれを上回る場合は、この限りではない)

・そしてインフレ率の検証で、上の適正マネー量算出が、大きく誤っていないことを確認する(私は、インフレが最大のマネー量を制限するものと今まで思っていたが、それはある意味考察不足だった。マネー量の最大の規定要因は技術力、生産力であり、次に人口。インフレ率は依然大事なものではあるが、検証するための副次的な役割でしかない)

・借金は返済しなければならない、いつかは返さなければならない。国の信用がなくなれば財政破綻(デフォルト)する、長期金利が上がって国債暴落する。そうならならいためには財政の収支を健全化(黒字化)させ、国債をこれ以上増やさず減らしていかなければならない。そのためには増税しかない

 

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国債増発論者(MMT)、新しい政府通貨発行論者、財政破綻論者(増税論者)はそれぞれ正しいことを言っているが、見ているフェーズが違うので話がかみ合わないし、どちらが正しい、誤っているという論争にも結論が出ない。

現実を絶対として、現実を崩せないと思うのであれば財政破綻論者が正しいし、現実は崩せるし、場合によっては変えていく必要があると思うのであれば、国債増発論者や政府通貨発行論者が正しい。何を絶対と見るかによって異なった答えが出る。

数学の問題で言えば、何を所与とするか(何を前提条件とするか)によって答えは変わる。

 

より現実社会に目を向けているのは財政破綻論者であるが、一方でより大局的な見地がないので、今回に関して言えば主張自体が実現不可能であること(本当にやるなら財政破綻した夕張市で行ったようなことを今すぐやらなければならない)、また本来の自然法から外れることであることに気付かない(近視眼的)。大局的にみれば誤りに陥ることだということに気付かない(本当は必要ないのに、近視眼的とらわれにより必要だと心から信じ、その結果国の形を壊し、国民の生活をめちゃくちゃにし不幸に追いやる)。

 

国債増発論者(MMT)と新しい政府通貨発行論者は、理想主義的であり、現行制度にとらわれず、より深いところから現状の問題を打開しようと考察している。自然法にものっとっている。大局的な視野に立ち、人々を幸福へと導こうとする。しかし、現行制度への配慮がおろそかになりがちであるし、変革への必要エネルギー量が大きすぎることもあり、実行力にも欠ける。取組みが中途半端なところで失敗したときのリスクも大きい(借金を増やして増やして、財政破綻したり、マネー増発に次ぐ増発で悪性インフレを引き起こす可能性もある)。進むべきは現実的に、理想的な方策に移行する道筋を見つけることだろう(パラダイムシフト)。

 

やさ男、金と力はなかりけり

と言うが、古今東西、理想家は素晴らしい案を思いつくものの実行力に欠けるし、現実家は抜群の行動力はあるものの現実的な案に終始し、理想的な仕組みはつくれない。

ここから神が言いたいことは一つしかない。

現実家が理想家の意見を採用することでしか幸福な社会は作れない、ということだ。

理想家が現実家になるのは水が低きから高きにのぼるようなもので、難しいが、

現実家が理想家の意見を採用するのは水が高きから低きに流れるもので、自分のアイデアを実行できないのは面白くないかもしれないが、可能だ。

現実家の人には是非この点を肝に銘じてほしいと思う。

 

物事の本質は、商品サービスの供給量である。マネーはただの分配のツールで、方便でしかない。コンビニのお弁当がたくさんあっても、貧困の人は買えないで、大量廃棄される。こういう事実を目にするたびに人は「何かおかしい」と気付く。そしてその直感はきっと正しい。そしてそれは自然法が人々にそう感じさせているのだ。きっとこの現実は変えられるし、変えなくてはならない。

 

 

5-6結論

マネーを増加させることで、GDPを増加させる。それは必要な商品サービスを供給させ、消費させることである。

それは増税ではできないし、国債増発も財政破綻のリスクと返済のリスクがあるのでできれば避けるべきで、必然的に新しい政府通貨発行のみが回答となる。

そして国の歳出を拡大させ、医療福祉や教育、研究など必要な産業に資金を投入する。

また、個人個人にはBIを給付することで、消費を促し、供給を増加させる。

 

民間マネー増加には、いつまでもバブル崩壊の失敗におびえて委縮するのではなく、失敗してもまた立ち上がれるようなマインドを持つこと。

我々個人個人にできることは、マネー量を規定する生産力供給力を高めるべく、日々工夫し、簡単に商品サービスを作れるようにすること。

 

 

 

 

 

  • 参考文献等

ガイ・スタンディング著『ベーシックインカムへの道』2018年、プレジデント社

週刊エコノミスト「もう働かなくても大丈夫?ベーシックインカム入門」2020年7月21日、毎日新聞出版

日本ベーシックインカム学会第三回年次総会(オンライン視聴)特に小野盛司氏、荒井潤氏、山下元氏の講義、2020年9月22日

井上智洋、小野盛司著『120万円を配れば日本が幸せになる』2021年、扶桑社

大西つねきさんのユーチューブ動画等

れいわ新選組ユーチューブ動画「みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか?」

橋本徹ひろゆきのユーチューブ動画「ベーシックインカム導入で犯罪や病気は減少、少子化も解決!?橋本徹ひろゆきが議論NewsBAR橋本♯82」ABEMAニュース

藤巻健史さんのネット記事(財政破綻論者の意見を参考とするために)

NetyaNewさんのツイッター

新・人類社会研究所ホームページ(NetyaNewさんのツイッターのリンクから)

NetyaNewさんとyukaさんのユーチューブ動画

金納雅彦さんのツイッター

新田たつふみさんのツイッター

のらねこまさんのツイッター

無条件ベーシックインカム住民投票さんのツイッター

その他多くの方のツイッター

Thanks