ベーシックインカム㊽_ギリシャ危機を元にした検証および新しい絵「ニトフ」の共有について_2022/12/24/Sat
2022/12/24/Sat
- ギリシャ危機を元にした検証
先日池戸万作さんのツイートを引用リツイート等していた。
政府債務を増やして、通貨供給量を増やせば経済成長できるという話だ。
するとリプライで、それが本当ならギリシャはどうなんだ、という反論があるアカウントからあった。
そこで気になり調べてみた。もしかしたら私が何か間違っているのかもしれない。
2009年10月からギリシャ危機は始まったようだ。
財政赤字を隠蔽しており、赤字は5%ではなく実際は12%だったというものが発端で、
ギリシャがお金を借りづらくなり、
IMFやEUの支援(条件として増税、年金減額、緊縮財政、構造改革が求められた)を受け、財政をなんとか建て直した。
2015年には国民が厳しい締め付けに反発して、ポピュリスト政党が政権を執り、反緊縮路線を進めようとしたが、
EUとの交渉に行き詰まり、
結局は増税、年金カットを余儀なくされた。
2018年8月にギリシャ支援の金融プログラムが完了。
2012年には10年国債の利回りが30%にまで上昇していたのが、
2019年7月には2.05%にまで低下した。
ギリシャ危機の文脈で日本を論じるとき、
日本も国債が暴落して、
お金が借りられなくなったら、
資金繰り破綻することはありうるのではないか、
という話になる。
しかし、ユーロ通貨圏のギリシャとは異なり、
日本は、自分で円を発行できる点が異なり、
最悪の場合、円を刷ることができるから問題ないという意見は多い。
しかし、財政ファイナンス(円を刷る)は、世界の歴史の教訓として基本的には禁止されている。
放漫財政に歯止めがかからなくなり、戦争に走ったり、高いインフレになり、
信頼を失うおそれがあるからだ。
ギリシャは国債を乱発していたわけではないし、ハイパーインフレにもなっていなかった。
ギリシャの事例は国債発行と経済成長の因果関係はむしろ正の相関関係にあることを証明している(緊縮財政で国債発行を抑えられてから、経済成長しなくなった)。
以上の調査から、申し訳ないが先のツイートの対する、「それが本当ならギリシャはどう説明するんだ?」という反論は当たらないと思う(国債発行が経済成長に結びつくのは事実だと思う)(ただし、国債発行をしすぎて、日本国債の格付けが下がり、お金を借りにくくなったらギリシャみたいになるのでは?という注意点は私も認識することができた)。
小さな政府と知られているアメリカでさえ、1990年と2022年を比較すると政府債務残高は6倍になっている。日本はこの間5倍である(数字は「世界経済のネタ帳」というサイトを参考にしている)。
ギリシャはこの間11倍。
ちなみに韓国は同期間で45倍。
中国は1995年から2022年で70倍である。
いかに経済成長に、政府債務増加(マネー供給量の増加)が欠かせないかがわかるだろう。
マネー供給量には政府マネー供給のほかに、民間マネー供給もある(民間銀行の融資残高の増加分)。この2つが車の両輪である。
日本はバブル崩壊で民間が委縮した(民間銀行の融資残高が伸び悩む)中で、小さな政府を指向した。要するに車の両輪をどちらも止めてしまったのだ。その結果、経済成長はぴたりと止まってしまった。他国が経済成長していく中で、日本だけがこの30年取り残されてしまった。失われた30年。
経済成長がピタリと止まってしまったので、GDP比での国債残高が他国に突出して大きくなってしまった。国債を増やしているのはどこの国も同じだし、日本以上にみんな増やしている(ところで、日本が増やした政府債務は、経済成長していないならどこに消えたのだろうか?それは大企業の内部留保だと思われる。使われないで滞留しているお金は、バケツ(財・サービス、経済全体)の中に注いだ水(マネー供給)が、バケツの穴から出て行ったようなものだ)。大きな違いは民間マネーの増え方が日本では異様に低かったことだ。その結果、他国のような経済成長ができなかったと私は考えている。
とるべきだった正しい手段としては、委縮してしまった民間分も補えるような大規模な政府債務増加(政府支出増加)を行うべきだったと思う。
- 新しい絵「ニトフ」
国債がダメだと言うなら、借金がダメだと言うなら、堂々と新しい政府通貨発行を行えばよい(ベーシックインカムの財源としては、税金<国債(MMT)<新しい政府通貨発行、の3種類があり、右に行くほど好ましいと思う。国債と新しい政府通貨発行の違いは、本質的には同じようなものであるが、国債は返さなければいけない、とか財政破綻のリスクにまで踏み込むと新しい政府通貨発行が良いという話になる)。
しかし、それも放漫財政になり、戦争に走るというのであれば(本来、マネー供給と戦争は別の問題だと思うのだが、親和性がどうしても高いのだろう)、負の所得税にだけ新しい政府通貨発行を許してはもらえないだろうか。
それで憲法にうたう最低限度の文化的な生活を保障し、分配問題でいうところのミニ・マックス基準(マキシミン基準、ロールズ基準)を満たし、不足分は累進課税税率の増加で補う(マックス・ミニ基準を満たすことにつながる)。
新しい政府通貨発行分(負の所得税分)ぐらいは、財・サービスは増えるだろうと思われるので(生活費として消費されるだろう)、インフレリスクも少ないと思う(バケツ(財・サービス、経済全体)に水(マネー供給)を入れると水位(物価)が上がるが、バケツが広がれば、水位は上がらない)。
それでも、インフレの具合を見て、インフレが大きいようなら財源の内、新しい政府通貨発行を減らし、累進課税分を増額する(税金はマネーの還流であり、マネー量を増やす効果はないのでインフレにはならない)。
かくして一億総中流と言われた、安心安全の時代の日本に近づくことができる。当時はワークフェア(企業福祉)と家族制度福祉が強かったが、今はそれらが解体されつつあり、代わりに負の所得税による福祉(Negative Income Tax welFare: NITF:ニトフ)にて安心安全を保障しようではないか。
財・サービスが増えるということはその分お金が増えなければならず、お金が増えない場合はデフレになる(=デフレだった頃の日本)。
財・サービスが増えないのにお金が増えれば、その分インフレになる(=ハイパーインフレなど)。
財・サービスが減るのにお金の量が変わらなければインフレになる(=人口減少社会)(=戦時下、戦争直後)。人口減少社会においてはお金の回収も考えなければいけなくなるかもしれないが、自然と民間銀行の融資残高が減っていくことである程度可能だろう。
高齢者福祉については、お年寄りに対して若者の方が少ない時代はこれからも続くだろうから、税金ではまかなえず国債発行などは必要な時代がまだ続くだろう。
お金を透明にして(お金の存在を無視して)考えてもらいたい。必要な財・サービスの量が増加減少するのであり、それに合わせてその交換券たるお金の量は調節してやらなければならない。
まずはお金を増やすことで呼び水となり、経済成長が起こるということを肝に銘じてもらいたい。
お金がなければ逆に、本来必要な財・サービスでさえ作られなくなっていくだろう(=デフレ下の日本)。
以上でこの論考を終わる。