ベーシックインカム㉚_ベーシックインカムとインフレ_2021/04/27
●古典的な貨幣数量説(フィッシャーの交換方程式)というものがあります。
MV=PT
M:貨幣量
V:貨幣の取引流通速度
P:物価
T:1期間における財・サービスの取引量(=GDP)
例えば、VとTが一定のままで、貨幣量を100倍にしたら・・・
100M × 1V = 100P × 1T
となり、物価が100倍になるということ。貨幣量について考えるときに参考になる式ですね。
●インフレ、デフレについて、
バケツに水をそそぐイメージ
をもとに考えてみる。
水:貨幣量(M)
水位:物価(P)
バケツの穴から漏れ出す分:人々が貯蓄に回す分(V)
バケツの大きさ:生産能力=供給能力=幸福度=GDP(T)
日本というバケツに、水というお金を注ぐ。
水位という価格水準が上がる。
→インフレになる
●もう一度フィッシャーの交換方程式に戻る
MV=PT
これを変形すると
P=MV
T
マネーMを増やしてやっても、生産力Tが増えなければ、インフレになる。
「お金があればもっといろいろできるのに。もっと世の中上手くいくのに」
(=M増やすべき) ←今これ
Or
「お金はあるけど供給能力が追いつかない」
(=M増やさないべき)
●もうひとつ面白い話をしよう。
P=MV
T
M:マネーサプライ1,283兆円
T:GDP560兆円
V:一定
とすると、
Pは2.29となる。これを物価の基準値とする。
今1億2000万人にベーシックインカムを月10万円給付する。
年間144兆円となる。
1,283兆円+144兆円=1,427兆円
このときPは2.54となる。先ほどのP=2.29と比べると、これは11%のインフレが起こったことになる。
しかし、実際には貯蓄に7割回って、実際に市場に流通する分には3割だけと仮定する。144兆円×0.3=43兆円
また、需要が増加することに対して、供給が追いつき、GDPも増える。10の需要増に対して、2割は供給が追いつき対応できるとする。43兆円×0.2=8兆円
1,283兆円+43兆円 ÷ 560兆円+8兆円 =2.33
このときPは2.33となる。先ほどのP=2.29と比べると、これは2%のインフレが起こったことになる。
このように、単純に水を増やしてやった分がインフレにそのまま回るわけではなく、実際にはバケツの穴からこぼれ落ちていく水もあり、またバケツの大きさも少し大きくなる。そのため、思ったよりは水位は上がらない(思ったよりはインフレにならない)。